にっきもどき。

ちんぽから社会問題まで広く扱いますが日記らしい日記はひとつもないらしいです。現場からは以上です。

バレットとザンギエフ

夜風が冷える季節になった。しみじみと思わせるのは、今年の夏が長かったせいだ。いや、むしろもう毎年のように夏が長い。全然終わらない。大阪の夏はとにかくじめじめして暑い。茹だるような暑さは9月を通り越して10月前半まで続いた。

 

 やっと秋か。と思えば、もう午前中の気温は一桁台になる時もあり、すでに冬の鱗片が見えてきてたりする。これは10月半ば、ぎりぎり秋だった時の話である。

 

図書館を出て、駅に向かって歩いていく。一週間前までは半袖を着ていたが今はおろしたての長袖のシャツと洒落込んでいる。最高温度が20度だと、長袖に一枚羽織るくらいがよくて、最低気温が20度だと長袖のシャツくらいが丁度いいらしい。

 

今日は最高温度が20度だから、ホントはもう一枚来たほうが良いらしいがなんせ図書館から駅までがそこそこ距離がある。最初はちょっと肌寒さを感じるが歩いているうちにどんどん暑くなって汗をかいてしまい、駅につく頃はもう一枚脱いでしまいたいくらいだ。

 

といっても半袖じゃあ少し心もとない。というか、多分風邪を引くくらいの季節の変わり目のちょうど真ん中に立たさせている気分だ。

 

歩いているとふと視線の先に一人の男が入ってきた。それはとてつもなくでかい男だった。

 

ザンギエフなのか?

 

 

一瞬そう思った。ストリートファイターシリーズにでてくるあのプロレスラーだ。それくらいデカかったが、赤パンじゃないし、ちゃんと服は着てるし、パイルドライバーを噛ましてきそうな感じもしない。そして次に、もしかして

 

 

バレットなのか?

 

 

そう思った。ファイナルファンタジー7に出てくるクラウドの仲間だ。でも右腕にギミックアームはついてないし、アバランチのリーダーにはとてもじゃないけど見えない。

 

男は、坊主頭で、でも耳から顎までひげが伸びており、黒のノースリーブに、銀のネックレス、とにかく体がでかいんだが、どことなく瞳はピュア。そういう風貌だった。でもどう考えても日本人だわ。顔がそれなりに薄いもん。

 

 

彼はその場でじっとただ立っている。その大きな体を道の隅に寄せて何かが来るのを待っているように見えた。それは久方ぶりの恋人との再会を待ち望んでいる表情にも見えたし、久しぶりに友達が地元に帰ってくるような表情にも見えた。とにかく、なにか久しぶりなものを待っているそんなオーラが出ていた。

 

そうすると一人の女性が彼のもとに駆け寄っていく。そのまま彼に飛びついた。感動の再会だ。抱きしめあった二人は、見つめ合いそして手と手を取り合って歩いていく。

 

おそらく久しぶりに恋人に会えたのだろう。じゃないとこんな大阪の下町でこんなに情熱的なハグは見れないよ。もうあれだ、あれ、パリだわ。ここは。淀川がセーヌ川に見えてきた。

 

進行方向が一緒だったので、二人と一定の距離を保ちながら歩いていく。仲良さそうに歩く二人は本当に楽しそうで、見てるこっちが熱くなる。「ふぅー熱いねーお二人さん!今からどこ行こうってんだい?若い男女がいくとこったー相場が決まってラアなぁ!」と冷やかしてしまいたくなるようなそんな熱さだ。

 

信号に引っかかってしまい、二人の足が止まる。僕もすぐに追い付いてしまい近くに足で止める。この二人いったい何喋ってんだろう。ちょっと気になったのでイヤホンを外してみる。女性の声が聞こえる。

 

 

 

今日の朝、うんこ流していってなかったよね?大変だったんだよー!」

 

 

耳が腐ってしまったのかな?聞き間違いじゃないければ、とんでもないことを聞いてしまった。

 

しかし、どう考えても「今日」「朝」「うんこ」「流してない」「大変」そのような単語が結構なボリュームで耳に入ってきた。まずこの二人全然久しぶりの再会じゃない!デフォルトでめちゃくちゃイチャイチャするタイプの人達だった。

 

まじか~~~~~~。やっぱ淀川だわ~~。パリ感ゼロ。うんこって。年頃の娘が彼氏の前でうんこて!なんだ~~いいじゃねぇか~~。うんこ!うんこって言って!お願い!!ああああああああああ

 

 

「もうパパってばしっかりしてよね!」

 

 

パパ~~???

 

パパだった~~~~~!なに~~~どういうこと???ママが外国人なの~~~???ひゃ~~~!やっぱセーヌ川だわ!インターナショナル!wow!

 

 

二人は信号を渡って僕とは反対方向に歩いていった。彼らともお別れだ。

 

なんだよ。ザンギエフ、、、結構なおっさんだったんだな。めちゃくちゃ若く見えたよ。健康の秘訣は薄着ですか?そんなことを見ず知らずのやつから言われたらマジギレされそう。それでこそパイルドライバーをかまされるかもしれない。

 

僕の予想を遥か上を行った彼らは今からきっと家族が待つ家に帰るんだろう。その暖かさがあればノースリーブでも過ごせるのかもしれない。あぁ愛とはなんて豊かなんだろう。そう思う秋の夜なのであった。

 

 

 

 

 

fin